ちょっと役立つコラム
11.42023
財産が少ない人も遺言書は必要なの?【静岡県の行政書士が解説】
私の身近な人によう言われる言葉…「遺言書なんて遺産が沢山ある人が書くためのものでしょ?うちには財産なんて自分が住んでいる家ぐらいしかないから書かなくても大丈夫だよ」
おそらく多くの方がこのような考えをお持ちなのではないでしょうか。
では、財産が少ないからと言って本当に遺言書は必要がないのでしょうか?
実は、財産の多い少ないと遺言書が必要かどうかは直接的な関係はありません。
父親が勝手に、「うちは金持ちじゃないから、相続で争うことはない」と安易に考えていると、生前に何の話し合いも対策もしないことでしょう。
しかし、そのまま相続に突入すると必ずと言っていいほどにもめることになります。家庭裁判所が発表している統計データで、相続で争っている人たちの財産の額を見ると、1000万円以下の財産で争っている人たちが全体の三分の一にもなります。それを500万円以下の財産まで広げると、全体の四分の三を占めているようです。
この数字をみるとむしろ財産が少ない方が揉めそうですね。
このように、財産の規模が大きくても小さくても、相続が争続になる可能性はあるのです。
もちろん、財産が住んでいる家だけでも争いはありえます。
たとえば…
息子と娘が独立していてそれぞれ家庭があり、夫婦二人だけで住んでいる…よくある話ですね。
そんな時、夫が突然亡くなってしまいます。
妻は悲しみに暮れながらも葬儀、各種手続きがやっと終わり、落ち着いたところで二人の子供たちが相続の相談に来ます。
「私たちにも相続権があるのだから、この家を売って、私たちにお金を分けてくれない?自分たちも子供が大学に行く学費や家のローンがかかって苦しいから少しでも分けてくれると助かるのだけど…」なんて言われて、住み慣れた家を追い出されてしまうことも考えられます。悲惨ですね。
あるいはこのようなケース…
「お母さん、一人になって寂しいでしょ?私たちが面倒みるから、一緒に住まない?お母さんも孫と一緒に暮らせて嬉しいでしょ?」
と言われ、無理やり娘が実家に住み、ちょうど孫が中学校になる頃…「子供が大きくなって一人一部屋与えたいからお母さんには申し訳ないけど小さいマンションを借りてあげるからそっちに住んでくれない?」と追い出されちゃうケースも考えられます。
どちらのケースも悲惨なパターンですね。
令和2年4月1日に民法が改正されて配偶者居住権の規定がされました。
社会の高齢化が進み平均寿命が延びたことから,夫婦の一方が亡くなった後,残された配偶者が長期間にわたり生活を継続することも多くなったことを背景に、配偶者が,住み慣れた住居で生活を続けるとともに老後の生活資金として預貯金等の資産も確保したいと希望することも多いと考えられます。
そこで、遺言や遺産分割の選択肢として、配偶者が無償で,住み慣れた住居に居住する権利を取得することができるようになったわけです。
配偶者居住権とは…
残された配偶者が被相続人の所有する建物(夫婦で共有する建物でもかまいません。)に居住していた場合で一定の要件を充たすときに、被相続人が亡くなった後も配偶者が、賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利です。
残された配偶者は、被相続人の遺言や、相続人間の話合い(遺産分割協議)等によって、配偶者居住権を取得することができます。
ただし、配偶者居住権は、第三者に譲渡したり、所有者に無断で建物を賃貸したりすることはできません。しかし、その分、建物の所有権を取得するよりも低い価額で居住権を確保することができます。遺言や遺産分割の際の選択肢の一つとして、配偶者が配偶者居住権を取得することによって預貯金等のその他の遺産をより多く取得することができるというメリットがあります。
詳しくはこちらをご参照ください。
法務省:残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。 (moj.go.jp)
何も対策をせずにいると、先ほどの例のように子供たちと話し合いをして子供たちの圧力に妻が負けてしまう可能性もあります。
残された妻が長年住み続けていた家から追い出されないようにするためにも、遺言書を書くことをおススメします。
遺言書で「宅地・建物は妻〇〇に相続させる」と財産をしっかり特定して遺言しておきましょう。
遺言で配偶者居住権を定めることなどをお考えの際は、おばた行政書士事務所までご相談ください。
おばた行政書士事務所では遺言書の作成のサポートを行っています。
まずはお気軽にご連絡ください。