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10.72026
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは?それぞれの特徴【静岡県の行政書士が解説】

「遺言書を作りたいけれど、自分で書くのと公証役場で作るのと、どちらがいいの?」
遺言書の作成を考え始めたとき、このように迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
遺言にはいくつかの方式がありますが、実際によく検討されるのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
どちらも法律で認められた遺言の方式であり、適法に作成されていれば、自筆証書遺言だから効力が弱い、公正証書遺言だから効力が強いという関係ではありません。
一方で、作成方法や証人の有無、保管方法、相続が発生した後の手続などには違いがあります。
この記事では、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを比較しながら、それぞれの特徴について解説します。
自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらも法律で認められた方式
民法第967条では、普通の方式による遺言として「自筆証書」「公正証書」「秘密証書」の3つが定められています。
このうち、自筆証書遺言は民法第968条、公正証書遺言は民法第969条に定められています。
まず押さえておきたいのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の間に、法律上の効力の強弱が定められているわけではないということです。
法律上の方式を満たし、有効に成立しているのであれば、どちらも遺言として効力を持ちます。
違うのは「効力の強さ」ではなく、どのような手続で作成するのか、作成後にどのように保管されるのか、相続開始後にどのような手続が必要になるのかという点です。
2つの遺言の違いを比較
主な違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 原則として本人が自書 | 公証人が関与して作成 |
| 証人 | 不要 | 2人以上必要 |
| 公証人の関与 | なし | あり |
| 本文の自書 | 原則必要 | 不要 |
| 保管 | 自分で保管、または法務局の保管制度を利用 | 公証人が管理 |
| 公証人手数料 | なし | あり |
| 家庭裁判所の検認 | 原則必要。ただし法務局保管の場合は不要 | 不要 |
| 作成後の撤回・変更 | 可能 | 可能 |
それぞれの違いを、もう少し詳しく見ていきましょう。
自筆証書遺言は自分で作成できる
自筆証書遺言は、遺言者本人が作成する方式です。
民法第968条では、原則として遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自書し、押印することが定められています。財産目録については、一定の要件を満たせば自書によらない方法も認められています。
具体的な書き方については別の記事で詳しく解説していますが、自筆証書遺言の大きな特徴は、公証人や証人の立会いを必要とせず、自分で作成できることです。
そのため、「まずは自分で遺言書を作りたい」「証人を用意せずに作成したい」という場合には利用しやすい方式といえます。
一方で、自分で作成できるからこそ、法律上必要な方式を満たしているか、遺言の内容が明確になっているかを確認することが重要です。
形式に問題がなくても、「どの財産を誰に取得させるのか」といった内容が曖昧であれば、相続開始後に遺言の解釈が問題になる可能性があります。
公正証書遺言は公証人が関与して作成する
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言です。
民法第969条では、公正証書によって遺言をする場合には、証人2人以上の立会いなど、法律で定められた方式に従うこととされています。
自筆証書遺言とは異なり、遺言者が遺言書の本文をすべて手書きする必要はありません。
また、法律の専門家である公証人が作成手続に関与するため、方式上の不備によって遺言が無効となるリスクを抑えやすいことも特徴の一つです。
ただし、「公正証書遺言であれば絶対に無効にならない」という意味ではありません。
例えば、遺言を作成した時点で遺言者に遺言能力があったか、本人の真意に基づく遺言であったかなどが争われる可能性は、公正証書遺言であってもあります。
公正証書という形式だけで、遺言をめぐるあらゆる問題を防げるわけではない点には注意が必要です。
公正証書遺言には証人が2人以上必要
自筆証書遺言では証人は必要ありませんが、公正証書遺言では証人2人以上の立会いが必要です。
ただし、誰でも証人になれるわけではありません。
民法第974条では、未成年者のほか、推定相続人や受遺者、その配偶者や直系血族などについて、証人になることができないと定めています。
そのため、公正証書遺言を作成するときには、法律上証人になることができる人を用意する必要があります。
「家族に証人になってもらえばいい」と考えていても、遺言の内容によっては、その家族が証人になれない場合があります。
証人を自分で用意することが難しい場合には、公証役場などへ相談しながら準備を進めることになります。
遺言書をどこで保管するかにも違いがある
遺言書は、作成しただけではなく、相続が発生したときにその存在が確認できることも重要です。
自筆証書遺言を自分で保管する場合には、自宅などで保管することになります。
この場合、相続開始後に遺言書を見つけてもらえない、紛失してしまうといった可能性も考えておかなければなりません。
一方、自筆証書遺言については、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することもできます。
この制度を利用すれば、遺言書の原本を法務局で保管してもらうことができます。
ただし、法務局が遺言内容の法的な有効性まで審査してくれる制度ではありません。
「法務局に預けたから内容にも問題がない」ということではないため、保管と遺言内容の確認は分けて考える必要があります。
公正証書遺言については、公証人が作成に関与し、その原本が公証人によって管理されます。
そのため、自筆証書遺言を自宅で保管する場合とは、原本の管理方法にも違いがあります。
相続が発生した後の「検認」にも違いがある
2つの方式を比較するうえで、相続開始後の手続も重要な違いです。
民法第1004条では、遺言書の保管者などに対して、相続開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出して検認を請求することを定めています。
自宅などで保管していた自筆証書遺言は、原則として、この検認手続が必要です。
ここで注意したいのは、検認は遺言書が有効か無効かを判断する手続ではないということです。
遺言書の状態を確認し、その内容を明確にして、偽造や変造を防止するための手続です。
一方、公正証書遺言には検認が必要ありません。
また、自筆証書遺言であっても、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合には、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」により検認は不要です。
したがって、
「自筆証書遺言=必ず検認が必要」
というわけではありません。
自筆証書遺言でも、保管方法によって相続開始後の手続は変わります。
公正証書遺言の作成手続はデジタル化されている
2025年10月1日から、公正証書の作成に関する一連の手続がデジタル化されました。
遺言公正証書も対象となっており、公正証書の原本は原則として電子データで作成・保存されます。
また、公証人の面前で行う手続についても、本人が希望し、公証人が相当と認める場合には、ウェブ会議を利用することが可能になっています。
ただし、遺言者が希望すれば必ずオンラインで公正証書遺言を作成できるという制度ではありません。ウェブ会議の利用が適切かどうかは、公証人によって判断されます。
そのため、公正証書遺言を作成する際には、希望する手続方法も含めて公証役場へ確認しながら進める必要があります。
「公正証書遺言の方が効力が強い」は誤解
自筆証書遺言と公正証書遺言を比較するとき、
「公正証書にした方が効力が強いですよね?」
と聞かれることがあります。
しかし、自筆証書遺言より公正証書遺言の法的効力が強いという規定はありません。
適法に成立した遺言であれば、どちらも遺言として効力を持ちます。
もっとも、実際には作成過程に違いがあります。
自筆証書遺言は本人が作成しますが、公正証書遺言には公証人と証人が関与します。
そのため、公正証書遺言では、作成時の手続や本人の意思確認について客観的な記録が残りやすいという違いがあります。
「効力が強いか弱いか」ではなく、公正証書遺言は公証人や証人が関与して作成されるため、自筆証書遺言とは作成過程や方式上の確認方法が異なります。
一度作った遺言書でも変更できる
「公正証書遺言を一度作ったら、もう内容を変えられないのでは?」
と思われるかもしれませんが、そのようなことはありません。
民法第1022条では、遺言者はいつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回できると定めています。
これは、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも同じです。
また、民法第1023条では、前の遺言と後の遺言が抵触するとき、その抵触する部分について、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなすことが定められています。
そのため、以前に公正証書遺言を作成していたとしても、その後に別の遺言を作成することは可能です。
ただし、複数の遺言書が存在すると、どこまで以前の遺言が撤回されたのか、どの部分が残っているのかが分かりにくくなることがあります。
遺言を書き直す場合には、新しい遺言だけを見るのではなく、以前の遺言との関係まで確認しておくことが大切です。
自筆証書遺言が向いているのはどんな場合?
どちらの方式を選ぶかは、その方の状況や希望によって異なります。
自筆証書遺言は、例えば、
|
といった場合には選択肢になります。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあるため、「自筆証書遺言だから必ず自宅で保管しなければならない」というわけでもありません。
また、自筆証書遺言は自分で作成できますが、財産の分け方や相続人との関係によっては、書き方に注意が必要です。内容が曖昧だと、相続開始後に解釈をめぐって問題になることもあります。
公正証書遺言が向いているのはどんな場合?
公正証書遺言は、
|
といった場合には検討しやすい方式です。
一方で、証人2人以上が必要となり、公証人手数料もかかります。
公正証書遺言にすれば必ず安心、自筆証書遺言なら問題が起こりやすいという単純なものではありません。
ご自身の財産や家族関係、遺言で実現したい内容を踏まえて、適した方式を考えることが大切です。
大切なのは「どちらで作るか」だけではない
遺言書を作成するときは、つい「自筆証書にするか、公正証書にするか」という形式に目が向きがちです。
もちろん、方式を選ぶことも大切です。
しかし、それ以上に確認しておきたいのが、その遺言によって自分が希望する内容をきちんと実現できるかということです。
誰に何を残したいのか、不動産や預貯金をどのように分けるのか、遺言を実際に執行する人を指定するのかなど、検討する内容は人によって異なります。
また、遺留分をはじめ、相続人との法律関係について確認が必要になる場合もあります。
形式だけを整えるのではなく、自分の財産や家族の状況に合わせて遺言内容を考えることが重要です。
まとめ|自分に合った遺言書の方式を選びましょう
自筆証書遺言と公正証書遺言は、どちらも法律で認められた遺言の方式です。
自筆証書遺言は、自分で作成でき、証人を必要としない点が特徴です。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用することもできます。
一方、公正証書遺言は、公証人が関与し、証人2人以上の立会いのもとで作成されます。家庭裁判所での検認が不要という違いもあります。
どちらが適しているかは、「手軽だから自筆証書」「公正証書なら絶対安心」といった理由だけで決めるのではなく、財産や家族関係、希望する遺言内容などを踏まえて考えることが大切です。
おばた行政書士事務所では、自筆証書遺言・公正証書遺言のどちらについても、遺言内容の整理や文案作成などのサポートを行っています。
「自分の場合はどちらで作った方がいいの?」
「遺言書に書きたいことは決まっているけれど、どのようにまとめればいいのかわからない」
そんな段階からでもご相談いただけます。
遺言書の作成に関するご相談は、おばた行政書士事務所までお問い合わせください。
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