ちょっと役立つコラム
10.62026
自筆証書遺言の書き方|最低限押さえておきたいルールとは?

「遺言書には、具体的にどのような文章を書けばいいの?」
「誰に財産を残すかは決まっているけれど、どう書けばよいのか分からない」
自筆証書遺言を作成しようとしたとき、このような疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自筆証書遺言には、民法第968条で定められた方式があります。原則として、本文、日付、氏名を本人が自書し、押印することが必要です。
しかし、こうした基本的な方式を守っているだけで、希望する内容が必ず実現するとは限りません。
例えば、財産を残す相手が相続人なのか、それ以外の方なのかによっても、適切な記載方法は異なります。また、複数の人に財産を残す場合や、遺言者より先に財産を残す相手が亡くなってしまった場合についても考えておく必要があります。
今回は、自筆証書遺言を作成する際の文章の書き方や、内容を決めるときに押さえておきたいルールについて、民法の規定を中心に解説します。
自筆証書遺言の文章はどのような順番で書く?
自筆証書遺言について、民法では、記載する条項の順番や見出しの付け方までは定められていません。
そのため、必ず決まった順番で書かなければならないわけではありませんが、複数の内容を記載する場合には、条項ごとに整理すると分かりやすくなります。
例えば、誰にどの財産を承継させるのかを最初に記載し、必要に応じて遺言執行者の指定などを続ける方法が考えられます。
また、「第1条」「第2条」といった形で条項を分けることも可能です。
ただし、条項番号を付ければ法律上の問題がなくなるというものではありません。大切なのは、それぞれの条項の内容が明確であり、条項同士で矛盾が生じないようにすることです。
特に、財産を複数の人に承継させる場合には、同じ財産について異なる指示を書いていないか注意しましょう。
「相続させる」と「遺贈する」はどう使い分ける?
遺言書の文章を考える際には、財産を残す相手によって、使用する言葉にも注意が必要です。
例えば、長男などの相続人に財産を承継させる場合には、次のような記載が考えられます。
「遺言者は、次の財産を長男○○に相続させる。」
一方、法定相続人ではない方に財産を残す場合には、遺贈という方法が考えられます。
民法第964条では、遺言者は、包括または特定の名義で、その財産の全部または一部を処分できる旨が定められています。
例えば、相続人ではない方に特定の財産を遺贈する場合には、次のような記載が考えられます。
「遺言者は、次の財産を○○に遺贈する。」
ただし、「相続させる」と「遺贈する」は、単に言葉が違うだけではありません。
財産の承継に関する法律上の取扱いや、相続開始後に必要となる手続きなどに違いが生じる場合があります。
また、相続人に対して遺贈することも法律上可能です。
したがって、相続人には必ず「相続させる」、それ以外の方には必ず「遺贈する」と機械的に決めるのではなく、相手との関係や希望する法律上の効果を踏まえて文章を考える必要があります。
複数の人に財産を残す場合の書き方
財産を複数の人に残したい場合には、誰に何を承継させるのかを明確にしておくことが大切です。
例えば、長男には不動産、長女には預貯金を承継させたい場合、それぞれの財産について条項を分ける方法が考えられます。
一方、特定の財産を複数の人で取得させたい場合には、それぞれの取得割合などについても検討する必要があります。
民法第902条では、被相続人が遺言で共同相続人の相続分を定めることなどが認められています。また、民法第908条では、遺産分割の方法を指定することなどが認められています。
ただし、相続分を指定することと、特定の財産を誰が取得するかを定めることは、同じではありません。
例えば、「長男の相続分を3分の2、長女の相続分を3分の1とする」という記載と、「特定の土地を長男と長女に共有持分で取得させる」という記載では、定めている内容が異なります。
また、相続人が複数いる場合には、遺留分に関する規定にも注意が必要です。
誰にどの財産をどのような形で承継させたいのかによって、記載内容を検討しましょう。
記載していない財産があった場合は?
遺言書を作成した後に、新たな預貯金口座を開設したり、財産を取得したりすることもあります。
そのため、遺言書を作成する際には、記載していない財産があった場合についても考えておくとよいでしょう。
例えば、特定の財産について承継先を定めるだけでなく、それ以外の財産についても承継先を指定する方法があります。
ただし、「その他の財産」や「残りの財産」という言葉を使用する場合には、何が含まれるのかについて、他の条項との関係も含めて確認する必要があります。
また、財産のすべてについて承継先を指定すれば、どのような問題も解決するというわけではありません。
例えば、個別の財産について定めた条項と、それ以外の財産について定めた条項が矛盾していれば、遺言の解釈が問題になる可能性があります。
具体的な財産を指定する方法と、財産全体を対象にする方法を組み合わせる場合には、対象となる財産の範囲が重ならないよう注意が必要です。
財産を残す相手が先に亡くなったら?
遺言書を作成した時点では、財産を残したい相手が健在でも、遺言者より先に亡くなってしまう可能性があります。
そのような場合を想定し、別の方を指定しておくことがあります。
例えば、ある方に財産を遺贈することを希望し、その方が遺言者より先に亡くなった場合には、別の方に遺贈する旨を記載する方法です。
民法第994条第1項では、遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは効力を生じないとされています。
また、民法第995条では、遺贈が効力を生じない場合などの財産の帰属について定められており、遺言者が別段の意思を表示した場合には、その意思に従うとされています。
そのため、誰に財産を残したいのかだけでなく、その方が先に亡くなった場合についても、遺言者の意思を明確にしておくことが考えられます。
ただし、相続人に対して「相続させる」と記載した場合と、遺贈の場合とでは、適用される法律や解釈上の問題が異なります。
特に、先に亡くなった方の子が当然に取得するとは限りません。
このような予備的な内容を記載する場合には、対象となる財産、条件、次に承継する方を明確にする必要があります。
遺言執行者を指定する場合の書き方
遺言書には、財産の承継先だけでなく、遺言執行者を指定することもできます。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な職務を行う方です。
民法第1006条第1項では、遺言者は、遺言で一人または数人の遺言執行者を指定し、または、その指定を第三者に委託することができると定められています。
例えば、遺言執行者として特定の方を指定する場合には、次のような記載が考えられます。
「遺言者は、この遺言の遺言執行者として○○を指定する。」
遺言執行者を指定する場合には、氏名などから対象となる方を明確にできるようにしておきましょう。
また、民法第1009条では、未成年者及び破産者は遺言執行者となることができないとされています。
さらに、遺言執行者を指定したからといって、その方が必ず就任するとは限りません。
民法第1007条では、遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならないと定められています。
そのため、指定する相手には、事前に希望を伝えておくことも考えられます。
なお、遺言執行者の職務や権限については、民法第1012条などに定めがあります。指定に当たっては、遺言の内容や必要となる手続きも踏まえて検討するとよいでしょう。
遺言書には夫婦で一緒に署名してもよい?
夫婦で同じ内容の遺言書を作成したいと考える方もいるでしょう。
しかし、民法第975条では、遺言は二人以上の者が同一の証書ですることができないと定められています。
これを共同遺言の禁止といいます。
そのため、夫婦が一つの書面にそれぞれの遺言内容を記載し、二人で署名押印するような作成方法は認められません。
夫婦がそれぞれ遺言書を作成する場合には、別々の証書として作成する必要があります。
また、一方が亡くなった場合に、その財産をもう一方が承継するような内容を希望する場合でも、それぞれの財産や相続関係を踏まえて記載内容を検討する必要があります。
内容が似ている場合であっても、遺言は本人ごとに作成するものです。
誰かに文章を考えてもらってもよい?
自筆証書遺言は、本人が手書きしなければならないため、文章の作成についても、誰にも相談してはいけないと思われるかもしれません。
しかし、法律上、遺言書の文案について専門家に相談することまで禁止されているわけではありません。
自筆証書遺言について定めた民法第968条が要求しているのは、原則として、全文、日付及び氏名の自書と押印です。
そのため、財産をどのように承継させるのかを整理し、事前に文案を作成したうえで、本人が内容を確認して手書きする方法も考えられます。
ただし、遺言は本人の意思に基づいて行うものです。
家族などが希望する内容をそのまま書くのではなく、ご本人が内容を理解し、自らの意思で決める必要があります。
また、法律上の方式を満たしていても、遺言能力の有無が問題になる場合があります。
民法第963条では、遺言者は遺言をする時において、その能力を有しなければならないとされています。
したがって、文案作成のサポートを受ける場合でも、最終的な内容の決定はご本人の意思によることが重要です。
まとめ|希望に合った文章を考えることが大切
自筆証書遺言を作成する際には、法律上の方式を守ることに加えて、どのような内容を記載するかも重要です。
特に、財産を残す相手との関係や、複数の人に承継させる場合の指定方法、遺言者より先に相手が亡くなった場合への備えなどについては、個別の事情を踏まえて検討する必要があります。
また、遺言執行者を指定する場合や、夫婦それぞれが遺言書を作成する場合にも、法律上のルールがあります。
一般的な記載例を参考にすることはできますが、その文章がすべての方に適しているわけではありません。
ご自身の希望と財産の状況に合った内容を考えることが大切です。
おばた行政書士事務所では、遺言書の作成に関するご相談を承っております。
ご本人の希望や財産の内容を伺いながら、遺言書の文案作成や法律上の方式に関する確認などをサポートしております。
「誰にどの財産を残すかは決まっているけれど、どのように書けばよいか分からない」「自分で作成した文章に不安がある」といった場合には、お気軽にご相談ください。
遺言書の作成に関するご相談は、おばた行政書士事務所までお問い合わせください。
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