ちょっと役立つコラム

“言ってあるから大丈夫”と思っているあなたへ…遺言を口で伝えるだけでは足りない理由【静岡県の行政書士が解説】

「もう伝えてあるから、大丈夫」そう思っていませんか?

「もし私に何かあったら、家は長女にお願いね」
「この通帳のことは、あなたに話してあるから」

ご家族との何気ない会話の中で、こんなふうに自分の想いを口にしてきたという方は多いのではないでしょうか。
特に50代になると、親の相続を経験したり、身近な人の病気や急逝をきっかけに、ふと将来のことが頭をよぎることも増えてきます。

ただ一方で、

  • 遺言書を書くのは、まだ早い気がする

  • なんだか縁起が悪い

  • 書面に残すほど大げさな話ではない

そんな気持ちから、「口で伝えてあるから大丈夫」と思っている方も少なくありません。

ですが、その“安心”、本当に大丈夫でしょうか。

口頭で伝えた遺言に、法的な効力はあるの?

結論からお伝えすると、原則として、口頭で伝えただけの遺言に法的効力はありません。

日本の法律では、遺言は

  • 自筆証書遺言

  • 公正証書遺言

  • 秘密証書遺言

など、決められた方式で作成されたものだけが有効とされています。

「本人がはっきり言っていた」
「家族みんなが聞いていた」

たとえそうであっても、書面として残っていなければ、遺言として扱われないのが現実です。


「家族が分かっているから」は、実は一番危うい

「うちは仲がいいから大丈夫」
「揉めるような家族じゃない」

そう思いたい気持ちは、とても自然です。
ですが、相続の現場では“悪意のないすれ違い”が原因でトラブルになることが本当に多いのです。

例えば──

  • 聞いた・聞いていない

  • そんなつもりだとは思わなかった

  • 昔はそう言っていたけど、気持ちは変わっていたかもしれない

口頭の約束は、証明することができません
そして、相続が発生した後に確認できるのは、「亡くなった方の気持ち」ではなく、「残された書類」だけです。

想いを大切にしたいからこそ、形にする必要がある

多くの方が誤解していますが、
遺言書は“財産のための書類”ではありません。

本来は、

  • 誰に、何を、どう残したいのか

  • 家族にどうしてほしいのか

そうした想いを、きちんと伝えるためのものです。

口で伝えた想いは、時間とともに薄れます。
受け取る側の記憶や解釈によって、少しずつ形を変えてしまいます。

だからこそ、
「大切だからこそ、書いて残す」
それは決して冷たい行為ではありません。

「遺言書=重いもの」と感じている方へ

50代の女性からよく聞くのが、

  • まだ元気なのに遺言書なんて…

  • そんな準備をするほどじゃない

  • 書いたら、何か起きそうで怖い

というお気持ちです。

ですが、遺言書は**“今すぐ亡くなる前提”で書くものではありません。**
今の気持ちを、今のうちに整理するためのものです。

しかも、内容は何度でも書き直すことができます。
「一生に一度、完璧なものを書かなければならない」
そんな必要はありません。

口で伝える前に、紙に一度書いてみる

いきなり正式な遺言書を作るのは、ハードルが高いと感じる方も多いでしょう。
それでも構いません。

まずは、

  • どんな財産があるのか

  • 誰に何を残したいと思っているのか

  • なぜそう思っているのか

これを自分のために紙に書き出してみるだけでも、大きな一歩です。

その先に、
「やっぱりきちんと形にしておこうかな」
そう思えたタイミングで、専門家に相談すれば十分です。

「言ってあるから大丈夫」から、「残してあるから安心」へ

口で伝えること自体が、悪いわけではありません。
むしろ、ご家族と想いを共有することは、とても大切です。

ただし、口だけでは足りない
それが、相続の現実です。

あなたの想いを、
あなたの言葉で、
きちんと残すために。

「言ってあるから大丈夫」ではなく、
「残してあるから安心」
そんな状態を、今から少しずつ目指してみませんか。

もし、
「何から考えればいいのか分からない」
「遺言書を書くほどではない気もするけれど、このままでいいのか不安」
そんなお気持ちが少しでもあるようでしたら、“書く・書かない”を決める前の段階から、お話を伺うこともできます。無理に作成を勧めることはありませんので、気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

おばた行政書士事務所では遺言書の作成のサポートを行っています。

まずはお気軽にお問い合わせください。

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