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10.102026
遺言書を書いた方がいい人とは?作成を検討したいケース【静岡県の行政書士が解説】

「遺言書は、財産がたくさんある人が書くもの」と思っていませんか?
遺言書というと、資産家や高齢の方が作成するものという印象があるかもしれません。
しかし、遺言書を作成する必要性は、財産の金額だけで決まるものではありません。
例えば、自分が住んでいる家を配偶者に残したい場合や、お世話になった人に財産を渡したい場合など、家族構成や本人の希望によって、遺言書の作成を検討した方がよいケースがあります。
一方で、すべての人に遺言書が必要というわけでもありません。
では、どのような人が遺言書を書いた方がよいのでしょうか。
今回は、民法の規定をもとに、遺言書の作成を検討したいケースについて解説します。
遺言書は必ず書かなければならないもの?
遺言書の作成は法律上の義務ではありません。
遺言書がなくても、亡くなった方の財産は民法に定められた相続のルールに従って承継されます。相続人が複数いる場合には、必要に応じて遺産分割協議によって財産の取得者を決めることもできます。
しかし、自分の財産を誰に残したいのか、具体的な希望がある場合はどうでしょうか。
民法第902条では、遺言によって相続分を指定できることが定められています。また、同法第908条では、遺産分割の方法を遺言で定めることが認められています。
つまり、法律で定められた相続のルールに任せるだけでなく、自分の意思によって財産の承継方法を指定することもできるのです。
そのため、遺言書を作成する必要があるかどうかを考える際には、財産の多さよりも、自分がどのように財産を残したいのかという点が重要になります。
1.子どもがいない夫婦
子どもがいないご夫婦は、遺言書の作成を検討したいケースの一つです。
夫婦のどちらかが亡くなった場合、残された配偶者がすべての財産を相続すると思われる方もいるかもしれません。
しかし、必ずしもそうなるわけではありません。
民法第890条では、配偶者は常に相続人になると定められています。また、同法第889条では、子どもなどの第1順位の相続人がいない場合、父母などの直系尊属や兄弟姉妹が相続人になることが定められています。
例えば、夫婦に子どもがおらず、夫の両親などの直系尊属も既に亡くなっている場合、夫が亡くなると、妻だけでなく夫の兄弟姉妹が相続人になることがあります。
このような場合に、残された配偶者に自分の財産をすべて残したいという希望があれば、遺言書を作成する方法が考えられます。
なお、兄弟姉妹には民法第1042条の遺留分が認められていません。ただし、父母などの直系尊属が相続人となる場合には事情が異なります。
子どもがいないからこそ、残された配偶者に何を残したいのか、一度考えてみることも大切ではないでしょうか。
2.自宅を特定の家族に残したい人
自宅などの不動産を所有している方も、遺言書の作成を検討することがあります。
例えば、夫婦で暮らしている自宅を、亡くなった後も配偶者に引き継いでもらいたいと考えている場合です。
また、子どもが複数いる中で、同居している子どもに自宅を残したいという希望を持っている方もいるでしょう。
民法第908条では、遺言によって遺産分割の方法を定めることが認められています。
そのため、自分が所有する土地や建物について、取得する相続人を遺言書で指定することができます。
ただし、遺言書で指定できるのは、原則として自分が所有している財産です。共有名義の不動産であれば、自分の持分について考える必要があります。
また、特定の相続人に財産を取得させる内容については、ほかの相続人の遺留分など、法律上の制約が関係する場合もあります。
遺言書の作成にあたっては、まず自分が所有している不動産を確認し、誰に残したいのかを明確にしておくことが大切です。
なお、行政書士が行うのは、紛争性のない遺言書の作成支援です。相続人間で不動産の取得をめぐって争いが生じている場合の交渉や、個別の権利紛争の解決を行うものではありません。
3.法律上の相続人ではない人に財産を残したい人
自分の財産を、法律上の相続人以外の人に残したいという希望がある場合も、遺言書の作成を検討したいケースです。
例えば、長年一緒に生活している内縁の配偶者や、お世話になった知人などに財産を残したい場合です。
民法第890条で相続人となる配偶者は、法律上の婚姻関係にある配偶者を指します。そのため、内縁関係にあるという理由だけで、当然に相続権が認められるわけではありません。
また、親しい知人であっても、それだけで法定相続人になることはありません。
しかし、民法第964条では、遺言によって財産の全部または一部を処分できると定められています。
この規定に基づき、相続人以外の人に財産を残す「遺贈」という方法があります。
例えば、特定の預貯金をお世話になった人に遺贈することや、所有する財産の一部を内縁の配偶者に遺贈することなどが考えられます。
もっとも、相続人以外の人に財産を残す場合には、財産を受け取る相手を明確にすることが重要です。また、遺言の内容によっては、遺留分などの問題について別途検討が必要になる場合もあります。
法律上の相続人ではない人に財産を残したいという希望がある方にとって、遺言書はその意思を形にするための重要な手段となります。
4.財産を残したい相手が先に亡くなった場合にも備えたい人
遺言書を作成する際には、財産を残したい相手が先に亡くなる可能性について考えておくこともできます。
例えば、自分の財産を兄に遺贈したいと考えている場合です。
遺言書を作成した時点では兄が存命でも、自分より先に亡くなってしまう可能性があります。
民法第994条第1項では、受遺者が遺言者より先に死亡したときは、その遺贈は効力を生じないと定められています。
そのため、財産を残したい相手が先に亡くなった場合には、別の人に財産を残すという内容を、あらかじめ遺言書に定めておく方法も考えられます。
このような内容は、一般に予備的遺言などと呼ばれます。
ただし、財産を受け取る人を複数記載すればよいというものではありません。どのような場合に、誰が財産を取得するのかを明確にする必要があります。
特定の人に財産を残したいという希望がある場合には、その相手が先に亡くなったときにどうしたいのかも、遺言書を作成する際に考えておきたい点です。
遺言書を作成する必要性が比較的小さいケースもある
ここまで、遺言書の作成を検討したいケースをご紹介しました。
しかし、これらに当てはまらないからといって遺言書が不要とは限りませんし、当てはまるからといって必ず作成しなければならないわけでもありません。
例えば、相続人が1人だけで、その人にすべての財産を承継させることに特別な希望や事情がない場合には、遺言書の必要性が比較的小さいことも考えられます。
また、相続人が複数いても、本人が財産の承継方法について特に指定したいことがない場合もあるでしょう。
そのような場合には、遺言書を作成せず、民法の規定に従って財産を承継することも可能です。
遺言書を作成するかどうかは、年齢や財産の多さだけでなく、本人の希望や家族構成などを踏まえて考えることが大切です。
遺言書はいつ作成すればよい?
遺言書について考えると、「まだ元気だから、もう少し先でもいいかな」と思う方もいるかもしれません。
しかし、遺言書はいつでも自由に作成できるわけではありません。
民法第963条では、遺言者が遺言をする時にその能力を有していなければならないと定められています。
そのため、将来、判断能力が低下してしまった場合には、有効な遺言書を作成することが難しくなる可能性があります。
一方、一度作成した遺言書を、生涯変更できないわけではありません。
民法第1022条では、遺言者はいつでも遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回できると定められています。
家族構成や所有する財産に変化があった場合には、必要に応じて遺言書の内容を見直すこともできます。
そのため、遺言書を作成したいという希望があるのであれば、年齢だけを理由に先延ばしにする必要はありません。
遺言書を作成する前に整理しておきたいこと
遺言書の作成を検討する際には、まず自分がどのような財産を所有しているのかを確認してみましょう。
預貯金や不動産などの財産を整理し、誰に残したいのかを考えます。
最初から遺言書の文章を完成させる必要はありません。まずは、自分の希望を整理することから始めてもよいでしょう。
そのうえで、遺言書を作成する場合には、民法で定められた方式を守る必要があります。
民法第960条では、遺言は法律に定める方式に従わなければすることができないとされています。
自筆証書遺言については民法第968条、公正証書遺言については同法第969条に規定があります。
具体的な作成方法は遺言書の種類によって異なるため、それぞれの方式に応じた要件を確認する必要があります。
自分で作成することに不安がある場合には、行政書士に遺言書の作成支援を依頼することもできます。
行政書士は、他の法律で制限される業務を除き、ご本人の意思を確認しながら、紛争性のない遺言書の原案作成や必要書類の準備などを支援することができます。
一方、相続人間の紛争に関する交渉や、遺留分侵害額請求などの個別の権利紛争への対応は、行政書士の業務範囲には含まれません。
このような問題については、弁護士に相談する必要があります。
まとめ|自分の財産を誰に残したいか考えてみましょう
遺言書は、財産が多い人だけが作成するものではありません。
子どもがいない夫婦や、特定の家族に自宅を残したい人、法律上の相続人ではない人に財産を残したい人など、本人の希望や家族構成によって、作成を検討したいケースは異なります。
また、財産を残したい相手が先に亡くなった場合に備えて、遺言書の内容を考えておくこともできます。
もちろん、遺言書を作成することが、すべての相続に関する問題の解決につながるわけではありません。
それでも、自分の財産を誰に残したいのかという希望がある場合には、法律で定められた方式に従って、その意思を書面に残しておくことには意味があります。
「自分の場合は遺言書を書いた方がよいのだろうか」と考えたときには、まず自分がどのような財産を持ち、誰に残したいのかを整理してみてはいかがでしょうか。
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