ちょっと役立つコラム
10.112023
データの保存媒体とともにデジタル遺産は相続できるのか?
データの保存媒体とは、物理的なデバイス、つまりパソコン(その中のハードディスク等の媒体)、USBメモリー、スマートフォン等を指します。
これらについてはあくまでデバイスという動産であることから、民法上の相続財産となり、物としての相続手続の対象となるのが原則です。
物としてはそのデバイスを承継した人に所有権があるので権利上の制約はありませんが、パスワード等による事実上の利用・制御の困難があり得る点には注意が必要です。
例えば、亡き父からパソコンを相続して私のモノにはなったけどパスワード等のロックがかかっていて使えないかもしれなということです。
では、デバイスに保存されたデータ自体はデバイスを相続した人のモノになるのでしょうか。
デバイスに保存されたデータについてはデバイスの所有権とともに承継されることになりますが、そのデータ自体がインターネット等を経由したサービスになる場合、サービスのアカウントやサービス利用に伴って生じるデータが当然に承継されるものではありません。
例えば、デバイスにSNSのメッセージが保存されていたとすると、デバイスを承継した場合に見ることができるかもしれません。
しかし、SNSのアカウントを承継できるもとは限らないのです。
もし、私が亡くなったとして私のスマートフォンを娘が相続したとしても私のInstagramやX(旧Twitter)のアカウントまでは娘が引き継ぐわけではありません。仮に引き継げてしまったら私はこの世にいないのに娘が代わりに投稿してSNS上で生きていることになる…と考えるとちょっと怖い気もします…
また、亡くなった方が動画配信サービスを利用していたとすれば、その動画を視聴することはできるかもしれませんがアカウントまでは承継されません。
もし、そのまま動画を視聴し続けると利用規約違反になる可能性も考えられるでしょう。
これと同様に、各種ポイントサービス等についても、仮にデバイスからアクセスが可能であってもアカウントの承継ができるかできないかは別問題です。
これはサービス提供者のサーバー側のデータを元にサービスを提供するものであって契約・利用規約に基づき承継ができるのかどうかの内容を判断することになります。
また、別の視点として、著作権等の知的財産権の問題もあります。デバイス上に保存されたデータにおいて著作権が生じる表現等が残っていたとしても、デバイスの所有権と著作権等の知的財産権とは別の権利になるので、デバイスの承継者に権利が引き継がれるとは限りません。
以上のことから、デバイス内に残っているデータが(契約等の存在に関する証拠となることはあるとしても)これにかかる権利自体の承継の根拠となることもないということでが考えられます。
そのため、この問題を回避できるように、デジタル遺産の相続について意識を持ち、問題点を把握し、必要な準備をすることが重要なのです。
例えば、デジタル情報についてエンディングノートにまとめておく、ネット上で使用していない不必要なサービスはあらかじめ解約をしておく…等が考えられます。
年齢問わず、人生いつ何が起こるか分かりません。思い立ったら準備をしておきましょう。
おばた行政書士事務所では遺言書作成のサポートを行っております。
お気軽にお問い合わせください。