ちょっと役立つコラム
11.62024
金銭消費貸借契約書で守る大切なお金の関係【静岡県の行政書士が解説】
お金の貸し借りは、親しい関係でも発生することがあるものです。
たとえば家族や友人間のちょっとした借入れや、事業をサポートするための資金提供など、さまざまな場面でお金のやりとりが行われます。
しかし、どれほど信頼がある関係でも、お金が絡むと誤解やトラブルが起こりやすくなります。
身近な人の方がお金の貸し借りをしやすい反面、トラブルになるなんてことも考えられます。こうした事態を防ぐために、「金銭消費貸借契約書」を活用することが重要です。
今回は、金銭消費貸借契約書の基本的な仕組みや必要性について、解説していきます。
金銭消費貸借契約書とは?
金銭消費貸借契約書とは、簡単に言えば「お金を借りた、または貸したことを証明するための書類」です。この契約書には、借主(お金を借りた人)と貸主(お金を貸した人)がそれぞれの立場を明確にし、借入れの内容や返済に関する条件を詳細に記載します。これにより、双方が何を約束したのかを確認し合えるため、後々のトラブルを未然に防ぐことができるのです。
なぜ金銭消費貸借契約書が必要なのか
お金の貸し借りにおいて、金銭消費貸借契約書を用意することには、次のようなメリットがあります。
1.貸し借りの条件が明確になる
契約書により、返済期日や返済方法、利息の有無などを具体的に示すことができます。たとえば、「返済は3年間、毎月1日に1万円ずつ」という条件を記載すれば、貸主も借主もお互いにスケジュールが明確になります。返済日が近づくと、「支払わなければ」という意識が働きやすく、返済を怠るリスクが減ります。
2. 記憶のズレを防ぐ
「いつまでに返済する」「どのように返済する」といった記憶が曖昧になることはよくあります。例えば、家族や友人に「返済期限は気にしなくていいよ」と言われた場合、借主は甘く考えがちです。しかし、契約書があると、双方が書面に記された内容に基づいて確認できるため、トラブルを避けやすくなります。
金銭消費貸借契約書の具体的な内容と例
金銭消費貸借契約書には、以下のような項目を記載することが一般的です。
1. 契約当事者の情報
契約書には、貸主と借主の氏名、住所などの基本情報を記載します。これにより、誰が貸したのか、誰が借りたのかを明確にします。
例:
「貸主:佐藤太郎(住所:東京都新宿区〇〇)
借主:鈴木花子(住所:東京都渋谷区△△)」
2. 貸付金額と貸付日
貸し借りする金額とその受け渡し日を明確に記載します。
例:
「借主は、2024年11月1日に貸主から現金100万円を借り受けました」
3. 返済期限と返済方法
返済方法についても細かく記載することが望ましいです。たとえば、毎月の返済額や返済日、返済期限などが含まれます。
例:
「借主は、2025年11月1日までに、毎月1日に8,000円ずつ返済するものとします」
4. 利息の有無
利息の取り決めについても、事前に確認し記載しておくと良いでしょう。利息がある場合は、その割合や支払方法も詳しく記します。
例(利息あり):
「利息は年利3%とし、返済と同時に支払うものとする」
5. 遅延損害金の取り決め
返済が遅れた場合の対応も契約に盛り込むと良いです。遅延損害金は、返済遅延が続く際のペナルティとして利用され、一定の金額や割合を定めることで、遅延防止の抑止力となります。
例:
「返済期日に遅延した場合、年利6%の遅延損害金を支払うものとします」
6. 契約の解除条項
必要に応じて、契約解除の条件や再度の契約変更に関する取り決めも盛り込むことが可能です。
例:
「貸主または借主が返済計画に支障をきたした場合、双方協議の上、契約の変更を行うことができる」
金銭消費貸借契約書を作成する上での注意点
金銭消費貸借契約書を作成する際に注意すべきポイントをいくつか紹介します。
1. 曖昧な表現は避ける
「できる限り早く返済する」「都合の良い時に支払う」などの曖昧な表現は避け、具体的な期限や条件を明記しましょう。例えば、返済が「3年以内」とされていた場合、双方の解釈が異なるとトラブルの元になります。
2. 証人や連帯保証人を立てる
場合によっては、証人や連帯保証人を立てることも検討できます。第三者が関与することで信頼性が増し、借主が誠実に返済を行う意識が高まる傾向があります。
3. 公正証書にすることも検討
さらに安全性を求める場合は、公証役場で契約書を公正証書として作成することも可能です。公正証書にすると、借主が返済に応じない場合でも、裁判を経ずに強制執行を行えるため、貸主にとっては大きな安心材料となります。
金銭消費貸借契約書の必要性を実感するケース
最後に、具体的なケースを挙げて、金銭消費貸借契約書の必要性を考えてみましょう。
ケース1:友人同士での貸し借り
Aさんは親友のBさんに「事業を始めるための資金として50万円を貸してほしい」と頼まれ、快く応じました。しかし、契約書を交わさずに貸したため、後日返済を求めた際に「返済期限があったとは思わなかった」と言われてしまいます。信頼関係があっても、口頭だけでは誤解が生じやすいため、このケースでは契約書を作成しておくべきでした。
ケース2:家族間での資金援助
Cさんは、弟のDさんに生活費として100万円を貸しましたが、契約書は作らずに済ませました。しばらくしてDさんが別の家族に「Cさんから資金援助をもらった」と話していたのを耳にして、Cさんは困惑します。金銭消費貸借契約書を作成し、「貸付金」であることを記載していれば、お金が貸し借りであることが明確にできました。
まとめ
お金の貸し借りは、大切な人間関係にも影響を及ぼします。金銭消費貸借契約書を作成することで、誤解やトラブルを防ぎ、双方が安心してお金のやりとりを行える環境を整えられます。お金の関係を円滑に保つためにも、ぜひ金銭消費貸借契約書の作成を検討してみてください。
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