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契約書・示談書・遺言書で重要な「物の特定」とは?【静岡県の行政書士が解説】

はじめに

契約書、示談書、遺言書といった書面を作成する際、必ず意識しておきたいポイントの一つが「物の特定」です。

書面に何かを記載する以上、その内容は将来、当事者以外の第三者が目にする可能性があります。
そのときに、
「これはどの物のことを指しているのだろう?」
と疑問が生じてしまうような表現では、せっかく作成した書面の意味が薄れてしまいます。

この記事では、契約書・示談書・遺言書に共通する「物の特定」について、なぜ必要なのか、どのように特定すればよいのかを、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。

「物の特定」とはどういうことか

物の特定とは、簡単に言えば、第三者が読んでも同じ物を一つに絞り込める状態にすることをいいます。

当事者同士では当然分かっているつもりでも、書面に残す以上、その「共通認識」は通用しません。
「見れば分かる」
「いつも使っているものだから大丈夫」
といった感覚は、書類の中では非常にあいまいな表現になってしまいます。

書面は、時間が経ってから、あるいは関係性が変わった後にこそ、その内容が問われます。
そのため、物の特定は「今の自分たち」ではなく、「後から読む第三者」の目線で行うことが重要です。

よくいただくご質問から見える「特定」の重要性

契約書や遺言書についてご相談を受ける中で、
「物はどのように特定すればいいのでしょうか?」
「どこまで詳しく書けば足りるのでしょうか?」
といったご質問をいただくことがあります。

このようなご質問が出てくる背景には、
「細かく書きすぎると大げさなのではないか」
「ある程度書いてあれば伝わるのではないか」
というお気持ちがあることも少なくありません。

しかし、書面において大切なのは、気持ちではなく判断できる材料がそろっているかどうかです。
特定が不十分だと、後になって解釈が分かれ、思わぬトラブルにつながる可能性があります。

不動産の特定方法

不動産は、物の特定が最も重要とされる対象の一つです。

土地の場合

  • 所在

  • 地番

  • 地目

  • 地積

を、登記事項証明書(登記簿)に記載されている内容どおりに記載するのが基本です。

住所表記だけでは、同じ場所に複数の地番が存在する場合、特定ができないことがあります。
そのため、登記簿上の情報を用いた特定が必要になります。

建物の場合

  • 所在

  • 家屋番号

  • 種類

  • 構造

  • 床面積

といった項目を組み合わせて記載します。

金銭・預貯金の特定方法

金銭や預貯金は一見すると分かりやすいように思えますが、実際には注意が必要です。

「預金をすべて」
「〇〇銀行の口座」
といった表現では、どの口座を指しているのかが明確になりません。

そのため、

  • 金融機関名

  • 支店名

  • 預金種別

  • 口座番号

を記載することで、特定性が高まります。

バッグ・時計・アクセサリーの特定方法

遺言書などでは、バッグや時計、アクセサリーといった動産について記載するケースもあります。

このような場合、
「高価なバッグ」
「お気に入りの時計」
といった表現では、どれを指しているのか判断できません。

そこで、次のような情報を組み合わせて特定します。

バッグの場合

  • ブランド名

  • 商品名またはシリーズ名

  • サイズ

  • 購入時期

  • 保管場所

時計の場合

  • ブランド名

  • モデル名

  • 型番

  • 製造番号(シリアルナンバー)

  • 購入時期

アクセサリーの場合

  • 種類(指輪・ネックレスなど)

  • 素材(プラチナ、ゴールドなど)

  • 宝石の有無や種類

  • 購入時期

  • 保管場所

すべてを完璧に書く必要はありませんが、他の物と区別できるだけの情報を重ねることが大切です。

示談書での特定が持つ意味

示談書では、何について解決したのかが明確でなければ、後の紛争を防ぐことができません。

たとえば、
「本件に関する損害賠償として〇円を支払う」
とだけ記載されている場合、どの損害が対象なのか分からないことがあります。

示談書では、

  • どの出来事に関するものか

  • どの損害を対象としているのか

を、できる限り具体的に特定することが重要です。

遺言書では「気持ち」より「特定」が大切

遺言書には、書いた人の気持ちが込められることが多いものです。
しかし、気持ちを伝える文章と、法的に意味を持たせる文章は別物です。

「自宅は長男に」
「大切なものは妻に」
といった表現は、気持ちは伝わりますが、特定という点では不十分な場合があります。

遺言書では、感情を表す言葉よりも、事務的で具体的な特定を優先することで、相続人同士の無用な争いを防ぐことにつながります。

まとめ

契約書・示談書・遺言書における物の特定は、形式的な決まりごとではありません。
それは、将来のトラブルを防ぎ、書面に込めた意思を正確に伝えるための大切な要素です。

「これくらいで大丈夫だろう」
と思える部分こそ、一度立ち止まって、第三者の視点で読み直してみることが重要です。

物を具体的に、丁寧に特定すること。
それが、安心できる書面作成につながります。

書面に何を書くかは分かっていても、「この特定の仕方で本当に足りているのだろうか?」
と不安になることもあるかと思います。

契約書・示談書・遺言書の内容や特定方法について迷われた際は、お気軽にご相談ください。
状況に応じて、分かりやすく整理するお手伝いをいたします。

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