ちょっと役立つコラム
11.172024
物を貸し借りする際の使用貸借契約書の役割【静岡県の行政書士が解説】
物を貸し借りする行為は、日常生活やビジネスの中で頻繁に行われています。友人同士での自転車や工具、カメラの貸し借り、企業間での一時的な設備の貸与など、さまざまな場面で見られるでしょう。
これらの状況において、お互いの合意を守り、トラブルを防ぐために役立つのが「使用貸借契約書」です。
この記事では、使用貸借契約書の役割とその重要性について、具体例を交えながら詳しく解説します。
使用貸借契約とは?
使用貸借契約は、貸主が物を無償で貸し、借主がその物を使用し、契約が終了した時に返還することを約束する契約です。ポイントは無償であるという点で、賃貸借契約とは異なります。口約束だけでは後々「そんな話はしていない」といった誤解や争いが生じやすいため、使用貸借契約書を作成することで、そのリスクを大幅に減らすことができます。
使用貸借契約書の役割
1.貸借条件の明確化
使用貸借契約書の最大の役割は、貸主と借主の間で合意された条件を明確に記録することです。具体的には、以下のような要素が含まれます
使用目的 | 物を何のために使用するか |
貸与期間 | どれくらいの期間物を使用できるか |
返却条件 | 物をどのような状態で返す必要があるか |
これらを文書化することで、双方が条件を正確に把握でき、後で「そんなはずじゃなかった」という食い違いが生じにくくなります。
2.トラブルの予防
使用貸借契約書は、契約内容を明確にすることでトラブルを未然に防ぐ効果があります。例えば、借主が意図した用途以外に物を使用し、それが原因で問題が発生した場合も、契約書に基づいて話し合いができるため、解決がスムーズになります。
3.信頼関係の強化
契約書を交わすことで、双方が合意を守る姿勢を示すことになり、貸主と借主の信頼関係が深まります。特にビジネスにおいては、信頼関係が円滑な取引を支える重要な要素となります。明文化された契約は、口頭の約束よりも強い証拠となり、双方の安心感を高めます。
例:友人間の貸借でのトラブル防止
Aさんが友人のBさんに、一時的にカメラを無償で貸し出すとします。最初は「ちょっと使わせて」と気軽なやり取りで始まったとしても、使用中にカメラが故障した場合や、Bさんが約束の期間を過ぎても返却しなかった場合、どうすればいいのでしょうか?このような場面では、使用貸借契約書を交わしておくことで、問題が起きた際に双方が何をすべきか明確になります。条件を記載しておけば、AさんとBさんのどちらも困惑することなく話を進められるのです。 |
例:企業間での設備貸与
企業Aが企業Bに対して、大型の印刷機を一時的に無償で貸し出すケースを考えてみましょう。プロジェクト期間中、印刷機が壊れた場合や保守が必要になった場合、誰がどこまで責任を負うべきかを明確にしていないと、関係が悪化する原因にもなりかねません。使用貸借契約書に「保守点検は借主である企業Bが行う」「故障時の修理費用は借主が負担する」といった具体的な取り決めを記載しておけば、トラブルが起きた際にも迅速な対応が可能です。 |
使用貸借契約書を作成する際のポイント
1.条件の具体化
使用目的、貸与期間、返却時の条件を具体的に記載することで、予期しない事態に備えることができます。特に高価な物品の場合や長期間にわたる使用貸借の場合は、詳細をしっかり明記しておくことが重要です。
2.双方の責任と役割を明確に
物の損傷や盗難といった問題が生じた場合、誰がどのように対応するのかを契約書に盛り込むことで、責任の所在が曖昧にならずに済みます。
3.契約書の保管
双方で原本を持ち、契約内容の証拠として使用できるようにしておくと、安心して取引が行えます。複製を保管することで、契約内容の確認やトラブル発生時の証拠にもなります。
使用貸借契約書の意義
使用貸借契約書は、日常的な貸し借りからビジネスの設備貸与に至るまで、幅広いシーンで役立ちます。物を無償で貸す際に「契約書を作るなんて大げさだ」と感じることもあるかもしれませんが、ちょっとしたトラブルが大きな問題に発展することも少なくありません。使用貸借契約書を用意することで、誠実な取引と双方の安心を守ることができます。
物を貸し借りする場面で、一度立ち止まり、使用貸借契約書の重要性を考えてみてはいかがでしょうか?相手との信頼関係を築き、未来のトラブルを防ぐための一歩として、契約書の作成をおすすめします。
おばた行政書士事務所では、契約書の作成をサポートしています。
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